分子栄養学の英語はOrthomolecular、日本語でもそのままオーソモレキュラーとも言われています。ギリシア語の「正しい」という意味に由来するOrtho(正常な、整える)とMolecule(分子)を合わせた造語で、1968年にライナス・ポーリング博士がアメリカの権威ある科学雑誌「サイエンス」に発表した論文で初めて使われました。ポーリング博士(ノーベル化学賞、ノーベル平和賞を受賞)は、ビタミンCの研究で有名です。
人間は37兆個の細胞でできています。人が病気や体調不良になるときは細胞に原因があり、細胞が必要とする最適な量、適切なバランスの栄養素を用いることで健康を改善していくことができる、という考えです。従来の栄養学は欠乏症を防ぐ目的で年齢や性別によって標準値が決められていますが、分子栄養学では個体差を重視し、目的によって栄養素の摂取量を増やし、病気の治療や健康増進を期待しています。
例を挙げてみましょう。ビタミンCの一般的な推奨量は1日85 ~ 100 mgです。この量を下回るとコラーゲンが壊れ易くなり、壊血病(歯茎や歯のトラブル、毛髪や皮膚の乾燥、貧血)が起こります。心疾患の予防としてもこの量が定められています。しかし、これは免疫機能を高めたり疲労回復の効果を得られる摂取量ではありません。風邪予防、疲れを取るという効果を期待するのであれば1,000 mgや3,000 mg必要となり、更に副腎疲労などひどい疲労を和らげるため、免疫力を高めるため、また癌治療に使われるピタミンC点滴となれば、25,000 mgにもなります。
またスイスで出産育児をした方ならお馴染みのビタミンD、日差しの少ない国では、くる病予防に処方されます。スイスでは健康診断のための血液検査(Checkup-Labor)でも項目に含まれ、ビタミンD不足を指摘された方も結構いらっしゃると思います。日本では日差しもありまた食事からも摂れていたので、あまり注目はありませんでしたが、最近は日差しを避ける生活、食生活の変化から、くる病の子供が増えているそうです。東京慈恵医大の調査の結果、大人も含めて日本人の98%がビタミンD不足が見られました。その他、この度のコロナ感染の拡大に伴い、ビタミンDの充分な摂取が予防に効くと注目が集まっています。
飽食の時代、手軽に食事を済ませ、エネルギー補給を摂ることができる便利さがありながらも、多くの方が不調を抱えています。分子栄養学では、まずは基本の日々の3度の食事をバランスよくしっかりと摂り、足りない分をサプリなどで補いながら栄養を整えていきます。しっかり食事を摂っていても、サプリを摂っていても、消化吸収、つまり胃腸の働きが充分でない場合、更に細胞に取り込むための代謝ができないと栄養不足は起こります。ストレス社会に生きる私たちは、そのストレスで消耗するために今まで以上に必要な栄養素があります。手軽な偏った食事からの栄養不足、ゆっくりと食事の時間が取れないための消化吸収の問題があります。健康の為には「運動」「睡眠」「精神の安定」も欠かせませんが、その一端を担う食事を大切にすることは不可欠ですし、食事から睡眠、精神、運動の質の改善にも繋がるのです。
最後に、分子栄養学の血液検査では医療現場より更に深読みして、栄養不足を推測し、栄養不足を補うことで、医療では放置される体調不良を改善したり、病気を防ぐことを目指しています。例えば、高いと肝臓の病気とされる数値も低すぎる時にはタンパク質不足、ビタミンB6不足が疑われます。ただし脱水が起こっている血液は数値が上がる項目もあるので、血液検査を鵜呑みにはせず、必ず「きちんと食事が摂れているか」に重点が置かれるのです。
OA分子栄養学アドバイザー、OAオーソモレキュラーダイエットアドバイザー
シャルハーゆりか