肥満や糖尿病が増える中、ファスティングや糖質制限の健康法が20〜30年ほど前からブームとなり今では体質改善や病気予防として定着しています。一方で日本人、特に女性の低体重(BMI<18.5)は20%にも占め(先進国では5%未満)、深刻なレベルに達しています。日本では痩せていることが美しいという価値観、体重や見た目への強い圧力が根強く、それは肥満やカロリーを摂ることへの恐れや罪悪感に繋がっているように思われます。炭水化物(糖質+食物繊維)はその糖からATPというエネルギーを作り、あらゆる生命活動(脳、骨格筋、代謝など)を維持するために必要な大切な栄養素です。今回は炭水化物の取り方について考えてみたいと思います。
糖質過剰の害:大量の砂糖が体に入ってくると、砂糖は糖以外の栄養がないため、糖をエネルギーに変える時に体に蓄えていた栄養素(ビタミンB群、鉄、マグネシウムなど)を使い栄養不足を起こすことがあります。血糖値の急上昇に伴うインスリンの過剰分泌が続くと肥満、糖尿病、脂質異常症、動脈硬化などの生活週間病のリスクが高まります。砂糖が腸内の悪玉菌の餌になり腸内環境も荒らします。肝臓や腎臓の負担も増えます。食事からの十分な栄養が取れていないと脳がエネルギー不足を感じて、素早くエネルギーになる糖を欲する、という悪循環に入っていきます。砂糖はくれぐれも注意してください。
糖質不足の害:糖の摂取が足りないと脂肪やタンパク質を分解してATPを作り出します。それは筋肉の減少にも繋がり、インスリン抵抗性の原因になります。筋肉などのタンパクからの糖新生はアンモニアなどの老廃物を発生させるため、腎臓の負担も大きくなります。またタンパク質から作られるべき酵素、ホルモンなども障害をきたします。以下に糖不足から起こる主な症状を挙げてみます。
糖代謝異常:糖不足状態が続くと糖からATPを作る能力も落ち、血糖値の乱高下が起こりやすくなり、糖代謝異常になると太りやすく痩せにくい体質にもなってきます。
甲状腺機能低下:甲状腺とは基礎代謝、体温、心拍、呼吸、脳や筋肉の活性化などを調整するホルモンですが、低血糖が続くと甲状腺が機能を低下させ体が低エネルギーモードとなります。症状としては疲れやすい、寒がり、体重増加、脱毛、むくみ、眠気、物忘れ、集中力低下、徐脈、低血圧、便秘などがあります。
脂肪肝:肥満や過食、アルコールによる脂肪肝はよく知られていますが、最近は痩せの脂肪肝が増えています。低血糖が続くと、防衛反応として肝臓に脂肪を配備し、脂肪からのエネルギー供給に備えます。脂肪肝は高血糖、高血圧、脂質異常症と関係し、インスリン抵抗性が悪化します。
不眠:体内の血糖値が少なく夜間低血糖が起こると血糖値を維持するホルモン、アドレナリン、ノルアドレナリンの働きで血糖値を上げようとするため夜間覚醒が起こります。
メンタルの不安定:セロトニン、メラトニン、GABAといった精神を安定させるホルモンはタンパク質からビタミンやミネラルを使って作りますが、その代謝を促すATPがないとせっかくの材料が整っていてもそれらのホルモンを作ることができずに様々なメンタルの問題が起こります。
では、どの位の炭水化物を摂れば良いのでしょうか。必要エネルギーは様々な計算式がありますが、厚生労働省の推定エネルギー必要量より普通の活動レベルの大人の女性30〜40代で約2000kcalとします。栄養学で有名な炭水化物の割合と死亡率を研究した論文(2018、Dietary carbohydrate intake and mortality)によると、総死亡リスクは炭水化物摂取率50〜55%が最も低い結果になっています。2000kcalから50%の1000kcalを炭水化物から摂ることになります。糖質は1gは4kcalなので、1日に250gの糖質が必要です。ご飯100gの糖質は36g(日本食品標準成分表)で換算すると1日約4杯170gのご飯を食べる必要があります。おかずや間食からも炭水化物が入っているので、それを差し引いても1日3回170gのご飯となります。1回の食事のご飯170gは多いと感じられる方も結構いらっしゃるかもしれません。ご飯は食物繊維、タンパク質、ビタミンやミネラルも含まれる良質な糖質です。玄米や雑穀米にするとビタミン、ミネラルがより豊富になります。砂糖は控えてご飯をしっかり食べる習慣をつけましょう。もしも1食のご飯が90g程しか食べられない方は消化機能が低下していることも考えられます。その場合は急に増やすことで体調を崩すこともありますので、増やすときは10g位ずつ体調を見ながらよく噛んで(炭水化物は唾液による消化酵素から消化が始まります)、体調を見ながら増やしてみて下さい。
OA分子栄養学アドバイザー、OAオーソモレキュラーダイエットアドバイザー
シャルハーゆりか